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カッター工事に使われる主な工法

コンクリートの切断工事には、用途や作業現場の状況に合わせて様々なカッティング工法が用いられます。ここでは、建設業者にカッター工事を依頼する上で理解しておきたい代表的な工法を6つピックアップし、それぞれの特徴や主な用途、騒音や振動などの影響などをまとめます。

乾式(ドライカッティング)工法

ドライカッティング工法とは、水を使わずに構造物に穴を開ける施工方法で、近年普及が広まっている工法です。冷却水を使用する一般的なカッター工事と異なり、水の代わりに空気を送り込むドライカッティング工法は工場やテナントビルなど水が使用できない場所でも対応可能です。

乾式(ドライカッティング)工法の用途

この工法が最も効果を発揮するのは、水の存在そのものがリスクとなる、あるいは管理が極めて困難な環境です。

用途例:水の使用が厳しく制限される現場

稼働中の工場(特に精密機械や電子部品を扱う施設)、データセンター、サーバールーム、空港、原子力発電所、多数のテナントが入居する商業ビルなどが挙げられます。乾式(ドライカッティング)工法は、機器の故障や汚染、階下への漏水といった甚大な損害に繋がる水濡れリスクを、根本から排除できるために有用です。

用途例:環境への配慮が求められる現場

田畑や河川に隣接する場所も、乾式(ドライカッティング)工法が向いています。湿式工法で発生する汚泥(産業廃棄物)が流出し、土壌や水質を汚染するといったリスクがありません。汚泥の処理にかかるコストと時間も削減できます。

用途例:人や車両の往来が激しい公共空間

歩道や交差点などの場所での工事でも、乾式(ドライカッティング)工法は役立ちます。給水タンクやホース、汚泥回収装置といった付帯設備が不要なため、作業エリアを最小限に抑え、公衆の安全確保と交通への影響を低減できます。

ウォールソーイング工法

ウォールソーイング工法とは、設置したレールに沿ってダイヤモンドブレードを走らせるカッティング方法です。他の人力による工法と異なり、モーターで動く自走式のブレードによって対象物を切断するため、施工後の切り口が真っ直ぐに整う施工方法です。

ウォールソーイング工法の用途

精度高く行える工法のため、既存構造物への影響を抑えつつ、設計図通りの正確な加工が求められる改修工事に不可欠な技術です。

用途例:建築物の開口部新設・変更

既存の鉄筋コンクリート壁や床への、ドア、窓、空調ダクト用開口部の新設で用いられます。切断面が非常に平滑で美しく仕上がるため、後工程であるサッシや建具の取り付けがスムーズに進みます。

用途例:耐震補強工事

建物の耐震性能を向上させるための「構造スリット」設置工事で活用されます。地震時に建物の変形を促すスリットは、設計図通りの位置と幅で正確に施工する必要があります。レールシステムを用いるこの工法は、要求精度を確実に満たすことができます。

用途例:低振動・低騒音が求められる現場

稼働中の病院、学校、オフィスビル、地下道などでもウォールソーイング工法は使用されます。打撃を伴わない回転切断のため、ブレーカーなどと比較して振動や騒音が格段に少なく、周辺環境への影響を最小限に抑えながら安全に作業を進められます。

ワイヤーソーイング工法

ワイヤーソーイング工法は、ダイヤモンドワイヤーを使った非常に強力なカッティング工法です。ワイヤーを巻き付けさえすれば、対象物の大小や切り口の方向を問わないカッティングが可能で、遠隔操作によって地中や高所の構造物にも対応可能な施工方法です。

ワイヤーソーイング工法の用途

この工法は、ブレード(刃)を用いた他の工法では物理的に不可能な、巨大あるいは複雑な形状の構造物へのアプローチとして採用される工事です。

用途例:大規模・厚大構造物の切断・解体

橋梁の橋脚・橋台、ダム、巨大な機械基礎、発電所の構造物、煙突などで扱われるのが、ワイヤーソーイング工法です。円盤状のブレードでは刃が届かないような、極めて厚く巨大なコンクリート構造物を切断できる手段年て向いています。

用途例:高難易度・危険な環境での作業

水中・海中にある構造物、高所、地中、人が立ち入れない空間でも、安全性を高めるために使われます。駆動装置を離れた場所に設置し、遠隔操作で作業できるため、作業員の安全を確保しながら作業が進められます。

用途例:複雑な形状の切断

曲線や三次元的な形状を持つ構造物の切断も、ワイヤーソーイング工法の見せ場です。ワイヤーはプーリー(滑車)の配置次第で自在な軌道を描けるため、剛性のあるブレードでは不可能な、設計自由度の高い切断が可能です。

フラットソーイング工法

フラットソーイング工法とは、道路カッターを用いて道路や床板を切断する施工方法です。ウォールソーイング工法と似ていますが、レールを敷く必要がないフラットソーイング工法は着工まで時間を要さず、かつ切断スピードも速い点が特徴です。

フラットソーイング工法の用途

対応スピードと切断能力から、特に広大な水平面の切断作業で真価を発揮します。ただし、現場の環境(屋外か屋内か)によって、使用すべき機械のタイプが明確に分かれます。

用途例:屋外での大規模な切断(エンジン式が最適)

道路、高速道路、空港の滑走路、橋梁の床版などの水平面が続く場合は、フラットソーイング工法の出番です。パワフルで外部電源を必要としないエンジン式の機械が、長距離の舗装切断(打ち替え、目地切り、配管埋設など)において作業を迅速に進めます。

用途例:屋内での床スラブ切断(電動式が必須)

稼働中の工場、倉庫、スーパーマーケット、病院、換気が困難な地下街や冷凍・冷蔵倉庫にも向いている工法です。排気ガスを一切出さない電動式の機械が、作業員の安全(一酸化炭素中毒リスクの回避)と、施設内のクリーンな環境を両立させます。

ウォータージェット工法

ウォータージェット工法とは、超高圧水の力で対象物の表面を削るカッティング工法です。水を利用できる環境であれば対象物や施工箇所に制限がない点がメリットですが、他のカッティング工法と比較すると施工時に発生する騒音や振動が大きいというデメリットもあります。

ウォータージェット工法の用途

単なる「切断」ではなく、既存構造物の不要な部分だけを除去する「補修・修復」といった、デリケートな作業で重用されます。

用途例:コンクリートの選択的除去(はつり)

塩害や凍害、中性化により劣化した橋梁やトンネルの補修工事で使用される工法です。水圧を精密に調整することで、劣化した脆いコンクリートのみを破壊し、内部の鉄筋や健全なコンクリートを傷つけることなく除去できます。これにより、構造物の寿命を延ばす質の高い補修が可能です。

用途例:表面処理(目荒らし)と塗膜除去

コンクリート打ち増し前の下地処理、橋梁や壁面の古い塗膜、床のライニング材、アスベスト含有塗膜などの除去にも向いています。新旧材料の付着力を高めた下地表面を作れるほか、下地を傷めずに塗膜などを除去できます。また、水が除去物を包み込むため、有害物質の飛散を抑制する効果もあります。

用途例:火気厳禁の危険環境での切断

化学プラントや石油・ガス関連施設など、引火・爆発の危険性がある場所にも使われます。

グルービング工法

グルービング工法とは、専用機械を用いて路面を切断することで滑り止め効果をもたらす工法で、全国の高速道路や滑走路で使われています。道路の表面に切れ込みを入れることで排水性を向上させ、雨天時のハイドロプレーニング現象や積雪時の路面凍結を防ぐ目的で使われます。

グルービング工法の用途

車両や航空機の安全な走行・離着陸が最優先される交通インフラにおいて、その専門性を発揮します。

用途例:雨天時のスリップ事故防止

高速道路、空港滑走路、急カーブ、急な坂道で採用されます。路面に刻まれた溝が、タイヤと路面の間の水膜を効率的に排水する通路となり、タイヤが水に浮いてコントロールを失う「ハイドロプレーニング現象」の防止に役立ちます。

用途例:制動力の向上と速度抑制

交差点の手前、料金所の手前、峠道の工事でも使われます。溝のエッジがタイヤに食い込み、摩擦抵抗を増大させて制動距離を短縮します。また、横断方向に溝を設けると、通過時に特有の音と振動が発生し、ドライバーに減速や注意を促す警告として機能します。

用途例:冬季の路面凍結対策

寒冷地の道路でも路面の凍結対策として、グルービング工法が活用されています。溝が路面の氷膜を分断し、圧雪を排除しやすくします。また、散布された凍結防止剤が溝に留まりやすくなり、効果を持続させる助けとなります。

コアードリリング工法

コアードリリング工法とは、持ち運び可能なコンパクトサイズの機器での作業なので狭い場所での作業に適している一方、1cm単位からの孔あけにも対応するなど、高精細な作業も得意としている、様々な場所での活躍の場が期待される工法です。

コアードリリング工法の用途

単独の作業としてだけでなく、他の多くの建設活動を支える「基盤技術」として、あらゆる現場で活躍する工法です。

用途例:設備・配管のための貫通孔

あらゆる建物の壁、床、天井で使用されています。給排水管、ガス管、電気配線、空調ダクト、通信ケーブルなど、建物の機能に不可欠なライフラインを通すための最も基本的な用途です。

用途例:アンカー設置と強度調査

耐震補強工事、ガードレールやフェンスの設置、既存構造物の健全性診断でも、コアードリリング工法に出番があります。あと施工アンカーを固定するための精密な下穴をあけられるほか、構造物から円柱状のテストピース(コア)を採取し、圧縮強度試験などを行います。

用途例:他の切断工法の補助作業

ワイヤーソーイング工法の準備、不規則な形状の開口部作成のサポートとして使われることもあります。ワイヤーソーイングを実施する際に、最初にワイヤーを通すための孔は、この工法であけられます。また、孔を連続してあける「連続穿孔(ステッチドリリング)」により、ソーイング工法が適用できない複雑な形状の開口部も作成可能です。

【工事場面に合った工法・特徴で選ぶ】長野のカッター工事会社3選

道路・橋梁の工事なら

東海カッター
東海カッター
引用元:東洋カッター公式HP
https://www.tokai-cutter.co.jp/strong/

「短工期」を求める現場で
交通路に適した工法と体制

切断サイズ80㎝のパワフルなフラットソーイングが、広範囲のコンクリート切断や道路工事において、工期短縮に貢献。
計画から施工、工事後の廃棄物処理まで自社内でスピーディに対応できる。

対応現場数
10種

道路ビル鉄道橋梁工場ダム煙突滑走路トンネル公共施設

家屋・ビルの解体なら

開渡
開渡
引用元:開渡公式HP
https://www.kaito-group.com/jigyo/kaitai/cutter/

騒音・振動・粉塵の少ない
「近隣に配慮」した機材

湿式でホコリが出づらく、電動のためエンジン音が少ないパワーカッターを採用。
また、一般的な打撃解体と比べて騒音や振動が起こりづらいバースター工法にも対応。

対応現場数
2種

家屋ビル

目地・区画線改修なら

日本水機工
日本水機工
引用元:日本水機工公式HP
https://www.j-mizukikou.jp/service

「仕上がり」重視の工事で
発揮される表面処理技術

コンクリート打設後の目地切事例が多くあり、石畳風のデザインカッター工にも対応
劣化したコンクリートだけを的確に除去できるウォータージェット工法の実績も多数。

対応現場数
6種

道路ビル橋梁下水道発電所公共施設